
モーションキャプチャーの現場では長らく、マーカーの装着・キャリブレーション・スタッフによる調整といった準備工程が当たり前のものとして受け入れられてきました。しかし近年、こうした工程を大幅に省略できるマーカーレス技術が実用レベルに達しつつあります。その中で注目を集めているのが、DARI Motion, Inc.(ダリ・モーション)が開発したマーカーレスモーションキャプチャーソフトウェア「Captury(キャプチャリー)」です。
本記事では、Capturyがどのようなソフトウェアなのか、2つの製品ラインの違いや主な機能・活用事例を交えながら紹介します。
Captury 概要
| 項目 | 内容 |
| ソフトウェア名 | Captury(キャプチャリー) |
| 開発元 | DARI Motion, Inc.(ダリ・モーション、米国) |
| 方式 | マーカーレスモーションキャプチャー |
| 製品ライン | Captury Live(リアルタイム)/Captury Studio(ポストプロダクション) |
| 同時トラッキング人数 | 最大10人 |
| 対応スケルトン | 全身・指・表情(指・表情はオプション) |
| 対応カメラ | FLIRやHikrobot等の市販カメラ(GigEのみ)、OptiTrackカメラ |
| リアルタイムストリーミング | Unreal Engine、Unity、MotionBuilder、BoB、OSC、VRPN、ROS、OSVRほか |
| データ出力形式 | FBX、BVH、C3D、CSV |
| ライセンス | 1年間のサブスクリプション(教育・研究機関は永続ライセンスあり) |
Capturyとは
Capturyは、複数台のカメラを周囲に配置し、カメラ映像から骨格認識を行うことで3次元的なトラッキングを実現するマーカーレスモーションキャプチャーソフトウェアです。マーカーも専用スーツも不要で、計測エリアに入るだけで自動的にスケルトンが認識され、即座にトラッキングが開始されます。
従来の光学式モーションキャプチャーはマーカーの装着や事前キャリブレーション、スタッフによる細かな調整が必要でしたが、Capturyはこうした準備工程を大幅に省略できます。常設カメラによる自動スケルトン検出が可能で、専門のオペレーターがいなくても使用できる点も特徴のひとつです。作業着などの服装のまま計測できるため、演者への負担も少なく、活用シーンの幅が広がります。
2つの製品ライン「Captury Live」と「Captury Studio」
Capturyには用途に応じた2つの製品ラインが用意されています。
Captury Live(リアルタイムキャプチャー)
最大240fpsのリアルタイムトラッキングを実現する製品です。Unreal Engine・Unity・MotionBuilderなど主要なツールへのリアルタイムストリーミングに対応しており、ライブ配信や収録現場での即時活用が可能です。VTuberの3D配信やインタラクティブコンテンツ制作など、リアルタイム性が求められる用途に適しています。
Captury Studio(ポストプロダクション)
撮影済みの映像データをあとからトラッキング処理する製品です。無制限のフレームレートに対応しており、高速度カメラで撮影した映像の詳細な分析にも使用できます。スポーツパフォーマンスの分析・動作分析・歩行分析・技術伝承など、精密な解析を必要とする用途に向いています。
Capturyの主な機能
指・表情まで対応した高品質トラッキング
マーカーレスでありながら、全身の動きに加えて指の動きや表情まで精細にキャプチャーすることが可能です。手に何も装着することなく指の動きを取得できる点は、従来のマーカーレスシステムでは難しかった領域です。最大10人までの同時トラッキングにおいても、複数人が同時に動く場面で指の動きなど細部のクオリティが落ちないことが特徴です。
最大10人の同時トラッキング
カメラの台数を増やすことで対応人数を拡張できます。目安となるカメラ台数と対応人数は以下の通りです。
| カメラ台数 | 対応人数(目安) |
| 8台 | 3人まで |
| 12台 | 5人まで |
| 16台 | 7人まで |
| 24台 | 10人まで |
OptiTrackカメラとのハイブリッド運用
CapturyはFLIRやHikrobotなどの市販カメラ(GigE対応)でも動作しますが、OptiTrackのPrimeX22以上の解像度カメラを既に導入しているスタジオであれば、ソフトウェアを購入するだけでそのまま使用できます。また「DuplexMode」を使用すれば、物体はマーカー(剛体)でトラッキングし、人物はマーカーレスでスケルトンをトラッキングするハイブリッド運用が可能です(PrimeXシリーズのカメラとMotiveライセンスが必要)。道具や機材と人物の動きを同時に精確に取得したい用途に有効な機能です。
活用が期待される分野
Capturyはエンターテインメント分野にとどまらず、幅広い領域での活用が想定されています。
VTuber・映像制作
マーカーや専用スーツが不要なため、タレントが私服のまま3D配信・収録を開始できる環境を実現できます。実際にホロライブを運営するカバー株式会社は、Capturyを活用した「セルフブース3D」を2025年5月より運用開始。従来は大型イベント時にしか実施が難しかった3D配信を、カラオケ・ゲーム実況・屋外ロケなど日常的なコンテンツにも展開することを可能にしています。
スポーツ・リハビリ・医療
アスリートの動作分析やパフォーマンス改善、リハビリ時の歩行分析など、身体の動きを精密に計測する用途にも対応しています。実際に、生後10ヶ月の乳児から3歳の幼児まで、小さな身体の動きをリアルタイムにトラッキングした事例も報告されており、医療・発達研究への応用も視野に入ります。
工業・技術伝承
作業着のまま計測できる特性を活かし、熟練技術者の動作を記録・分析する技術伝承への活用も期待されています。工場や現場での動作データ取得にも対応できる設計となっています。
まとめ
今回は、マーカーレスモーションキャプチャーソフトウェア「Captury」について紹介しました。
マーカーや専用スーツなしで最大10人を同時にトラッキングでき、指の動きや表情まで高品質にキャプチャーできる点は、従来のマーカーレスシステムの弱点を大きく克服しています。リアルタイム用途向けの「Captury Live」とポストプロダクション向けの「Captury Studio」の2ラインが用意されており、用途に応じた選択が可能です。OptiTrackカメラを既に導入しているスタジオであればソフトウェアのみで導入できるなど、既存設備を活かした導入のしやすさも魅力です。
準備工程の削減と高いトラッキング品質を両立したいスタジオやコンテンツ制作現場にとって、検討の価値あるシステムといえるでしょう。
