
モーションキャプチャ業界において、新しい表現や導入のハードルを変える存在として注目されているのが、LiDAR(ライダー)センサーを活用したマーカーレスモーションキャプチャ「MOVIN(ムーヴィン)」です。特にその専用デバイスMOVIN TRACIN(トレーシン)は、非常にシンプルな構成ながら高精度かつリアルタイム性能を実現しており、VTuber、映像クリエイター、インタラクティブなコンテンツ制作者など幅広い層から注目を集めています。
一台で完結:セットアップの手軽さが強み

MOVIN TRACINの最大の特徴は、「1台のデバイスだけで全身をトラッキングできる」点です。マーカー(反射球)やスーツを必要とせず、セットアップ時間はわずか3分。さらにキャリブレーション(位置調整)は3秒間ポーズを取るだけで完了します。
この手軽さは、スタジオや時間が限られたクリエイターにとって非常に魅力的な導入ポイントです。
精度とパフォーマンス:マーカーベースに迫る追従力
高い自由度を持つ装置ながら、MOVIN TRACINは 光学式モーションキャプチャ(マーカー型)と比べて最大93%の精度を発揮します。
また、フレームレートは60fpsを維持し、遅延(レイテンシ)は0.1秒未満と非常に低く、リアルタイム性に優れています。
これにより、ゲーム実況やVTuber、ライブ配信など、即時性が求められる用途でも違和感のない動きをキャプチャ可能です。
AIによるクリーンアップ機能
MOVINは、AIを活用した自動補正機能を備えており、キャプチャ時によく出る問題点、例えば「足の滑り(スライディング)」「地面との接地感の不自然さ」「ポーズのドリフト」などをリアルタイムで修正します。
この機能により、キャプチャ後の手作業での補正コストを大幅に削減でき、より滑らかなモーションデータを得られるのが大きなメリットです。
キャプチャ領域の柔軟性
MOVIN TRACINは、キャプチャ空間(MoCap Zone)を1m × 1mから最大5m × 5mまで設定可能と柔軟性が高く、狭い自宅スタジオから広めの映像セットまで対応します。
これは演者の動きを制限せず、さまざまな物理環境での収録を実現するための重要なアドバンテージです。
安定性・耐ノイズ性能
LiDARベースのセンサーを使用しているため、明るさの変化や光の反射、電磁干渉(例:LEDステージや放送機材近傍)にも強いという特性があります。
また、デバイスは電源と通信の2本ケーブル(電源+Ethernet)で構成され、無線による不安定さを回避し、安定したデータ取得が可能です。
専用ソフトウェア「MOVIN Studio」

MOVINには、専用のPCアプリMOVIN Studioが用意されており、モーションの視覚化、リアルタイムストリーミング、キャプチャのコントロールができます。
特徴的な機能としては
・FK(フォワードキネマティクス)方式によるリターゲティング:任意のキャラクターボーン構造に対して動きを適用可能
・ハンドモーションキャプチャ(β版):トラッキング可能な手首・指の動きが実験的に導入されている。
・AIモデルの精度向上:最新バージョンでは補正アルゴリズムが強化され、より細かい動きも正確に反映できるようになりました。
・ストリーミング対応:ゲームエンジンや配信プラットフォームへのリアルタイム出力が可能です。
セッティング手順 — 簡単かつ迅速
MOVIN TRACINのセットアップは次のステップで完了:
1.デバイスを三脚などに設置
2.電源とEthernetケーブルを接続
3.MOVIN Studioで モーキャプゾーン(MoCap Zone) を設定
・この設定でキャプチャ空間の範囲を自由に調整可能(最小1m四方〜最大5m四方)
4.キャリブレーション(3秒間ポーズで自動調整)
5.キャプチャ開始 — AIによるクリーンアップ付きでリアルタイム記録
プライバシー配慮
MOVIN TRACINはLiDARとカメラを内蔵していますが、映像や深度データはローカルにのみ保持。データは外部サーバにアップロードされず、ユーザーが完全に制御できます。
また、使用されるLiDARは905nm(クラス1アイセーフ)で安全性にも配慮されています。
実務・用途でのメリット
・VTuber/ライブ配信:マーカーやスーツが不要なため準備が速く、手軽にキャプチャーが可能。AI補正で品質も高水準。
・インタラクティブコンテンツ:リアルタイム性が高いため、VR/MR、AR表現などライブ性のある作品制作に最適。
・モーション収集:1台でトラッキングを行えるため、少人数環境でのデータ収集が効率的。
・小規模スタジオ導入:設置スペースや機材コストを抑えつつ、クオリティ重視の制作が可能。
技術的な背景
MOVINは、LiDAR(深度センサー)から取得したポイントクラウドを基に、AI(深層モデル)で姿勢を推定するアプローチを採用しています。論文発表もされており、1台LiDARによるリアルタイム全身トラッキングを実現するためのデータ駆動型モデルが提案されています。
この手法により、マーカーの装着や複数カメラ配置といった従来の手間を大幅に軽減しながら、高精度な動作取得が可能になっています。
まとめ:MOVINは“自由”と“実用性”を両立した革新的モーキャプ
MOVIN TRACINは、マーカーレス+AI補正+シンプル構成という独自の組み合わせで、モーションキャプチャの敷居を大きく下げるデバイスです。準備の速さとキャプチャ精度のバランス、そしてリアルタイム性を兼ね備えており、VTuber、AR/VRクリエイター、小規模スタジオなど、さまざまなユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。
将来的には、ハンドトラッキングの強化や複数人トラッキングといった機能拡張も予定されており、さらに応用の幅が広がることが期待されています。
