
モーションキャプチャ技術の老舗OptiTrack(オプティトラック)が、バーチャルプロダクション向けの新たなカメラトラッキングツール 「Wired CinePuck(ワイヤード・シネパック)」 を発表しました。従来の無線方式CinePuckからの進化版として、精度、信頼性、リアルタイム性を大幅に強化。Inter BEE 2025での日本初公開も含め、その技術的背景や強み、導入メリットを探ります。
Wired CinePuckとは? — 有線化による信頼性の大幅アップ

Wired CinePuckは、OptiTrackがバーチャルプロダクションと放送用途向けに設計した イーサネット接続型の6DoFトラッキングデバイス です。OptiTrackの赤外線カメラ(OptiTrackシステム)と組み合わせて、物理カメラの位置と向きを高精度でキャプチャできます。
具体的には
- 11個の自発光LEDマーカー を備えた剛体構造
- 高精度 IMU(慣性計測装置) センサーによる回転データ取得
- PoE(Power over Ethernet) による給電およびデータ通信
これらを組み合わせることで、外部RFノイズや無線遅延の影響を抑えつつ、高スループットで安定したトラッキングが実現されています。
精度とレイテンシ:数値が示す実力
OptiTrackによれば、Wired CinePuckの性能は非常に高く、以下のような仕様を実現しています。
- 位置精度:±0.2 mm
- システム遅延:< 10 ms
- 回転精度:±0.1°
このレベルの安定性は、大型LEDステージやインカメラVFX(バーチャルプロダクション)といった、正確な実写とCG合成が重要な現場で特に重宝されます。
安定性を支えるテクノロジー

センサーフュージョンによる高信頼性トラッキング
OptiTrackのトラッキングソフト「Motive」は、Wired CinePuckの IMUデータと光学(マーカー)データをリアルタイムで融合 する機能を持っています。
これにより、光学マーカーがカメラ視界から一時的に隠れても、IMUの情報を使って滑らかな動きを維持可能です。
カスタマイズ可能なマーカー構成
Wired CinePuckには11 LEDマーカーが備わっており、拡散キャップを使ってマーカーの発光角度を調整可能。
制作現場やカメラのマウント構成によって柔軟に設計できる点が、大きな強みとなっています。
高品質IMUの搭載
32ビット相当の高解像度IMUを搭載しており、高い分解能と予測性を持つ動作データを実現。
これが、光学トラッキングのジッター(微小ぶれ)を補正し、より滑らかなカメラ軌道を提供します。
導入メリット:コスパと運用のしやすさ

コストパフォーマンスの高さ
OptiTrackの赤外線カメラで構築されたトラッキングエリア内であれば、複数のWired CinePuckを使ってマルチカメラ撮影が可能。 無線マーカーを貼るタイプのシステムや、高価格なカメラトラッキング専用機器に比べて、コストを抑えつつ複数カメラのトラッキングが行える点が強みです。
セットアップの自由度
マーカーを貼る必要がないため、天井や床への反射マーカー設置が難しいスタジオ(LEDステージなど)でも導入しやすい構成です。
これは、従来マーカー貼付が制約となっていた現場にとって大きなメリットとなります。
タレント/オブジェクトの同時トラッキング
CinePuckを使用したカメラトラッキング中に、同じOptiTrackシステムでタレントや小道具のトラッキングも可能。
追加機材なしで複数トラッキングを同時に行えるため、合成や演出の自由度が高まります。
実演と発表:Inter BEE 2025で日本初披露
Wired CinePuckは、Inter BEE 2025(幕張メッセ)にて日本国内で初めてデモ展示されました。
展示内容には以下が含まれています。
- OptiTrackシステムによるAR合成デモ
- Sonyカメラ(FR7など)と連携したキャリブレーション展示
- キャリブレーションソフト「CalibFX」との連動による精密トラッキング
この展示によって、日本市場でも本格的なバーチャルプロダクション用途への対応がアピールされました。
技術仕様と設置のポイント
| 項目 | 内容 |
| 接続 | ギガビットイーサネット(PoE)接続により給電+通信 |
| マーカー | 11個のアクティブLEDマーカー |
| IMU分解能 | 高解像度IMU(32ビット相当) |
| 寸法 / 重量 | 幅153.3 mm × 高さ 25.7 mm、約328g |
| マウント方式 | 1/4″-20 ×6、3/8″-16(ARRIスタイル)対応 |
| 角度調整 | 拡散キャップによる発光角度の最適化が可能 |
導入時の注意点と運用アドバイス

- Ethernet配線が必須:PoEスイッチやケーブル品質(Cat6など)を確保する必要があります。
- カメラキャリブレーション:CinePuckを正しくキャリブレートすることで、IMUと光学データの融合精度を最大化できます。
- スタジオ設計:トラッキングカメラの数や配置は、20 m四方など広範囲のトラッキングエリアを想定する設計が可能。
- セキュリティ:PoE接続を長時間使う場合、安定したスイッチや信号品質の管理が重要です。
まとめ:Wired CinePuckが拓くバーチャルプロの未来
OptiTrackのWired CinePuckは、高精度かつ低遅延のカメラトラッキングを実現しつつ、設置の自由度とコスト効率を兼ね備えた画期的なデバイスです。有線化による安定通信、IMUと光学データの融合、カスタマイズ可能なマーカー構成などは、特にバーチャルプロダクションや放送スタジオでの活用に強みを発揮します。
Inter BEE 2025での実演披露もあり、日本国内でも実際の運用を見据えた注目製品となっており、バーチャルプロダクションの現場に新たなトラッキングスタンダードとして定着する可能性を秘めています。
