
2025年2月、ドイツのMeshcapade社は単眼動画から人の動きを高精度に抽出できるマーカーレスモーションキャプチャソフトの最新版 「MoCapade 3.0」 を正式リリースしました。わずか1台のRGBカメラ映像を入力するだけで、最大4人までの全身モーションを同時に解析し、さらに手指の繊細な動きやカメラのトラッキングデータまでも自動生成できるという大幅な機能強化が、その大きな特徴です。本稿では、新バージョンで追加された要素、ワークフロー、活用シーン、そしてクリエイターにもたらすメリットを詳しく解説いたします。
最大4人まで同時キャプチャ――撮影現場をシンプルに
従来のマーカーレスキャプチャは「単独人物の撮影」に特化したものが多く、複数人の動きを同時に取得しようとすると、カメラを増設するか、あるいは個別に撮影してから、あとで合成する必要がありました。MoCapade 3.0 では深層学習ベースのマルチヒューマンポーズ推定モデルを刷新し、1台のカメラで最大4人までの骨格情報をリアルタイムに分離・追跡できます。これにより、ダンスユニットの振り付け確認や演劇リハーサル、大人数でのプリビズ撮影など、現場の機材や時間的コストが格段に削減されます。
指先までリアルに――手指モーションのフルサポート
新バージョンでは、従来要望の多かった指先のキャプチャ機能が正式に実装されました。十分な解像度の映像を用いることで、各指関節の回転情報を高精度に推定し、GLB、MP4、SMPL 形式でエクスポートできます。そのためピアノ演奏や細かな手作業のような繊細な所作も CG 上で忠実に再現でき、手元の演技が必要なゲームや広告制作のワークフローを大きく効率化します。
カメラトラッキングデータの自動抽出
MoCapade 3.0 では、人物のボディトラッキングと並行してカメラワークの解析も行い、3D空間内に対応するバーチャルカメラの移動・回転データを出力できます。GLB、MP4、SMPL 形式でのエクスポートに対応しているため、撮影現場で実際に揺れたハンディ映像の質感や、ズームイン・パンなどの手持ち特有のクセを 3DCG シーンへ簡単に再現可能です。従来はポスプロで手動調整が必要だった合成作業にかかる時間が大きく短縮されるでしょう。
ワークフロー:撮影から3Dデータ生成までわずか3ステップ
本システムでは、誰でも直感的に扱えるシンプルなワークフローが設計されています。撮影から3Dデータの書き出しまで、わずか3ステップで完結するため、専門的な知識がなくてもスムーズにモーションデータの生成が可能です。それぞれの工程は以下の通りです。
撮影
スマートフォンや一般的なRGBカメラを使用して、対象人物を撮影します。使用機材や解像度によって再現される動きの精度は異なりますが、高解像度の映像を用いることで、より詳細な解析が期待できます。
解析
撮影した映像をソフトにドラッグ&ドロップするだけで、AIが骨格や手指、カメラの各トラッキングを自動で行い、キーフレームをタイムライン上に生成します。解析処理はGPUを活用することでスムーズに行われ、標準的なPC環境でも効率的な動作が可能です。
書き出し
解析されたデータは、GLB、MP4、SMPL 形式でエクスポートできます。これらのファイルは、Blenderやその他の3Dツールで読み込み可能であり、映像編集やアニメーション制作など多様な用途に活用できます。
クリエイターを支える3つの強み
モーションキャプチャの新たな手法として注目されるこの技術は、単に動きを記録するだけでなく、映像制作の現場にさまざまな利点をもたらします。特に、導入コストの低さ、撮影の柔軟性、そして制作後の効率性という3つの観点から、クリエイターにとって心強いサポートとなっています。それぞれの特長を詳しく見ていきましょう。
コストの劇的削減
既存のカメラ1台のみで収録できるため、学生サークルやインディーズチームでも導入しやすい価格帯を維持しています。専用機材のレンタルや人件費を大幅に削減できるため、限られた予算でもハイクオリティなモーションキャプチャが実現可能です。プロトタイピングや実験的な映像表現にも気軽に活用できる柔軟性は、クリエイティブの裾野を大きく広げる要因となっています。
撮影現場の自由度向上
被写体はスーツやマーカーを装着する必要がなく、衣装のまま演技できます。屋外ロケ映像をそのまま解析に使えるため、ドキュメンタリ風PVやロケドラマにも適用可能です。自然光や風景の中で自由に動けるため、リアリティのあるモーションデータを得ることができ、演出の幅も広がります。照明や背景の制約を受けにくいため、低予算でも臨場感ある3DCG表現を実現できます。
ポストプロダクションの効率化
キャラクターとカメラ両方のトラッキングデータが揃うため、合成やエフェクト追加の作業時間を大幅に短縮できます。シーンに合わせたカメラのブレやズーム、パンなどを忠実に3D空間へ反映できるため、実写との馴染みも自然です。さらに、タイムライン上に自動でキーフレームが生成されることで、アニメーターの手間を減らし、修正や演出調整も直感的に行える制作環境を実現します。
まとめ
「MoCapade 3.0」は、単眼カメラのみで最大4人の全身と指先、さらにはカメラワークまでも同時にキャプチャできる画期的なソフトウェアです。専用スーツやマーカー、複数台の高価な撮影機材が不要であるため、個人クリエイターからプロのクリエイターまで、モーションデータ収集の敷居を大きく下げる存在として注目されています。
映像制作・ゲーム開発・教育研究・スポーツ解析など、多岐にわたる分野での導入が期待される本ソフトウェアは単眼動画の持つ手軽さと、AIによる高精度なポーズ推定の融合は、モーションキャプチャの常識を塗り替え、デジタル表現の新たな扉を開くことでしょう。手元のカメラで撮った映像が、数分後には高度な3Dモーションデータへと生まれ変わる──その未来はすでに、「MoCapade 3.0」とともに現実のものとなっています。
