XYN Motion Studioとmocopi Proキットが変える“本格モーキャプ”の常識

2025年3月にソニーがリリースした『mocopi Proキット』とPC向けアプリ『XYN Motion Studio』が、モバイル中心だったmocopiシリーズに本格的なプロ仕様の選択肢をもたらしました。これまでmocopiは「気軽に使えるモーキャプ」という位置付けでしたが、Proキットではセンサー数の増加やPCベースの編集環境によって、より高度な表現が求められる現場にも対応。既存ユーザーのアップグレード需要だけでなく、従来mocopiを敬遠していたプロユーザー層にも注目されています。

目次

12センサー体制と専用レシーバーで精度が段違いに

従来のmocopiでは、センサー6個による簡易トラッキング(頭・腰・手・足)でしたが、Proキットではセンサー数が12個に増加。頭部、腰、手首、足首、上腕、太ももに加えて、手足の動きを補助的に補足する構成となっており、複雑なダンスやアクションの動作でも滑らかで破綻の少ないキャプチャが可能です。

さらに、通信方式にも大きな違いがあります。従来のmocopiではBluetoothでスマートフォンに送信していたのに対し、ProキットではUSB接続のセンサーデータレシーバーを介してPCに直接データを転送します。これにより、無線遅延やデータ欠損のリスクを抑え、安定した高精度収録が実現します。

実際の使用感としても、「収録時のセンサーのズレやドリフトが大幅に減った」「長時間の収録でも安定している」といった評価が寄せられており、信頼性の高さが伺えます。

XYN Motion Studioで収録から編集までシームレスに

Proキットと併せてリリースされたPC用アプリ『XYN Motion Studio』も注目です。従来のmocopiアプリが単なる記録ツールに留まっていたのに対し、XYN Motion Studioは本格的なモーション編集機能を搭載。以下のような機能が含まれています。

・タイムライン編集(トリミング、補間)

・キーフレームの手動修正

・複数モーションの結合・管理

・クラウド保存と自然言語によるモーション検索

出力フォーマットはBVHとFBXに対応しており、MayaやUnity、Unreal Engineとの連携もスムーズにとれます。VTuberやアニメーション制作、ゲーム開発など幅広い分野での活用が見込まれています。

特に注目すべきは、「自然言語検索によるモーション抽出」というユニークな機能。クラウドに保存したモーションにタグを自動付与し、「ジャンプ」「腕を振る」といった言葉で検索できるため、大量のデータ管理が一気に楽になります。

プロでも使いやすい。導入コストと利便性の絶妙なバランス

Proキットは、光学式のモーションキャプチャ(赤外線カメラ+マーカー)と比較すると、設置や準備の手間が格段に少なく、場所に縛られず運用できるのが強みです。専用のスタジオを必要とせず、少人数でもすぐに収録可能な点は、制作予算や時間の制約が大きい現場にとって非常に魅力的です。

装着も簡単で、センサーの装着位置もアプリ内で確認可能。複数キャラクターの同時トラッキングも、キットを2セット用意することで対応できます。個人VTuberやインディー開発者、中小規模スタジオにとって、Proキットは「頑張れば手が届くプロ機材」として現実的な選択肢になってきています。

明確に分かれた2ライン戦略──mocopiとProの位置づけ

mocopiシリーズは、今回のProキット登場により明確な2ライン戦略を打ち出しました。

スマホと連携して気軽に使えるスタンダード版(mocopi)

スタンダード版のmocopiは、スマートフォンとの接続で手軽に使えることから、VTuberの入門用途やSNS向けの軽めなパフォーマンス収録などに適しています。装着も簡単で、持ち運びしやすく、セッティングの手間も少ないため、日常的な利用や個人クリエイターの活動を大きく支えてきました。

PCと連携し高精度な制作を可能にするProキット(+XYN Motion Studio)

Proキットは制作の質と精度を追求したい層に向けた本格派。PC接続による安定したデータ転送、12センサーによる高密度な動作トラッキング、XYN Motion Studioによる本格的な編集環境が揃っており、小規模スタジオから中規模以上のプロジェクトまで幅広く対応します。

これにより、ユーザーは自身の制作環境や目指すクオリティに応じて最適なmocopiモデルを選ぶことができ、mocopiブランドはより多様なニーズに応えるプラットフォームへと進化しつつあります。

今後の展開と可能性

今後は、XYN Motion Studioのさらなる機能拡張や、モーションキャプチャの精度向上、他ツールとの連携強化なども期待されており、モーション制作の現場における活用範囲はますます広がっていくことでしょう。

従来のmocopiで「精度が物足りない」と感じていたユーザーや、既にプロ向けモーキャプ機材を導入しているが「軽量で省スペースな選択肢が欲しい」といった層にとって、この新たな組み合わせはまさに“ちょうど良い”ソリューションと言えるのではないでしょうか。

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