
韓国・ソウルを拠点とするスタートアップ企業「Pony ENT」が、モーションキャプチャとバーチャルヒューマン技術を融合し、バーチャルアイドル業界に新たな風を吹き込んでいます。
同社は、最新鋭の3Dスキャンシステムとモーションキャプチャ設備を活用することで、リアルで魅力的なバーチャルヒューマンの制作を実現しています。現在注目を集めているのが、Pony ENTが開発したバーチャルヒューマン「SO:MI(ソミ)」です。彼女はTikTokやYouTubeなどのSNSプラットフォームを中心に活動しており、その高い完成度と自然な動きで多くのユーザーの関心を引いています。
スキャンからキャプチャ、生成までを一貫して対応
Pony ENTの大きな強みは、3Dスキャンからアバター生成、アニメーション、配信までを自社内で一貫して対応できる体制にあります。特に、顔の精密なスキャンと全身のモーションキャプチャを組み合わせることで、これまでのバーチャルキャラクターでは表現が難しかった“人間らしさ”を高い精度で再現しています。
「SO:MI」は、韓国の著名なパフォーマーの動きや表情をベースに作られており、ダンスやジェスチャー、目線の動きに至るまで非常に自然です。SNSに投稿されたショート動画では、一般のインフルエンサーと並んでも違和感がなく、Z世代を中心に着実にファンを獲得しています。
世界展開を見据えたプロジェクト
Pony ENTは韓国内にとどまらず、インドネシアの企業と共同でバーチャルヒューマンを開発するなど、アジア市場全体を視野に入れた展開を進めています。また、ChatGPTのような自然言語処理AIと組み合わせることで、バーチャルヒューマンとユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションを実現しています。
これにより、「SO:MI」は単なるCGキャラクターではなく、ユーザーと会話ができる“AIアーティスト”として進化しつつあります。将来的には、教育やイベント司会、ライブ配信、ゲームなど、さまざまな分野での活躍も想定されています。
モーションキャプチャ技術の可能性を拡張

Pony ENTの取り組みは、モーションキャプチャ技術の応用領域を広げるものとしても注目されています。これまでは映画やゲーム制作の裏方技術という印象が強かったモーションキャプチャですが、今ではキャラクターそのものを作り出す“コアテクノロジー”へと進化しています。
同社のスタジオでは、パフォーマーの動きをリアルタイムでキャプチャし、即座にアバターに反映させるシステムも導入されています。これにより、バーチャルライブやインタラクティブ配信にも柔軟に対応可能です。メタバース空間でのライブイベントや、バーチャル接客などとの親和性も高く、業界関係者の間でも注目度が高まっています。
“リアル”と“バーチャル”の境界を越えて
Pony ENTは、単なるバーチャルアイドル制作企業にとどまりません。同社が目指しているのは、“人間らしさ”を持ったデジタルヒューマンの創出です。代表者は、「私たちはAIと人間の間にある存在、つまり“デジタルヒューマン”の可能性を追求しています。単なるCGではなく、共感される人格を持った存在を作りたい」と語っています。
今後、こうした“人格を持つアバター”は、エンタメ業界に限らず、接客、教育、医療、ビジネスコミュニケーションなど、幅広い領域で活用されていく可能性を秘めています。
Pony ENTの取り組みは、モーションキャプチャ技術が担う役割の変化、そしてバーチャルヒューマンの未来像を示す好例と言えます。技術と表現力が融合する新たな地平において、同社の存在感はますます高まっていきそうです。