モーションキャプチャが多く用いられている運動解析とは

運動解析とは、
人や物など計測したい対象に「三次元位置座標値を計測できるマーカー」を付け、動いた際の移動量を解析し、デジタル化できる画像処理技術を用いて動きをデータ化し、解析を行うことです。

運動解析を行うことで物体の速度、加速度、角度や移動変化量などを算出することができます。その動作データを元に分析や評価をすることで、原因や結果を予測することが可能です。そしてその解析から得られた知識や技術は、スポーツや動作の改善のための利用から研究、開発といった先進技術の発展にも貢献しています。

今回は運動解析について、使用される手法や活用事例も一緒に触れていきましょう。

目次

運動解析をする目的

たとえばスポーツの世界では、モーションキャプチャを用いて動作を測定、解析、評価することで、フォームを簡単に確認できるようになります。
確認が容易にできるようになることで、無駄な動きを無くしたり力を入れるタイミングを図りやすくなったりと、改善に繋げることができます。
また運動解析により選手自身の身体に合った動きを知ることで、日々のトレーニングの効率化や試合でのより高いパフォーマンスを目指せるようになります。

また医療の世界では、個人にあった治療やリハビリテーションを実施する目的で運動解析が行われます。
この場合、動作する対象の能力と機能の障害を分けて明確化するためにデータが利用されます。
患者の運動データを解析することで筋力や身体機能の状態を確認することができ、未然に怪我を防ぐことにも繋がります。今後の治療計画を立てるサポートにもなります。

更に工場内の生産作業の改善にも、運動解析は利用されています。
作業する中で身体の無駄な動きを無くし、不可欠な動作を選定します。それにより、本来必要のない身体への負担を抑え、効率的な作業方法を確立する事が出来ます。
ごくわずかな動作の改善をするだけでも、身体を痛めづらくなり、作業効率化の効果が見込めます。
また、この動作解析のデータを他の作業者へ情報共有することもできます。
なので、作業に慣れている人の動きを不慣れな作業者に教えることで、簡単に技術の差を縮めることが可能となります。

運動解析に使用される手法

・映像解析
スマートフォンのカメラやビデオカメラなどでできる、非常に手軽で一般的な方法です。
撮影した映像を見返すことで動作を確認、分析することができます。
また、通常のカメラは最大60fps(フレームレート。1秒間の動画が何枚の画像で構成されているかを示す単位のこと)が一般的ですが、ハイスピードカメラで撮影することにより数千から数万fpsで撮影することができます。これにより、高速で動く物体をより鮮明に撮影することが可能です。

・動作解析ソフトウェア
映像をコンピュータ上で解析するツールです。
筋肉や骨格がどのように動いているか3DCGアニメーションで表示できるものから、CSV形式で数値をデータ化、グラフデータに出力ができる機能など、様々あります。

・モーションキャプチャシステム
特殊なセンサーとカメラを使用し、人や物体の動きを三次元空間上でセンサーの座標を追尾し記録する手法です。
画面に描写される平面的な映像だけでは分析できない動きも、専用のソフトウェアを利用し多角的な視点で見返すことが可能となっています。

・計測器具
映像や座標データだけでは得られない人体データを取得するのに適した、様々な計測器具があります。
これらを組み合わせることで、より精度の高いデータを記録することができます。例えば、計測器具には次のような物があります。

1,筋電計
筋肉が動く際に発生する微弱な電気信号を計測できる器具です。
筋電計から取得した筋電図から運動単位の評価が可能となります。

2,フォースプレート
身体とフォースプレート間の作用によって発生する床からの反力を計測する器具です。
たとえばプレート上で歩行時や走行時の生じる力を測定したり、ジャンプして着地した際の圧力などを測定することができます。

3,慣性センサ
慣性の力を利用して動きを測定するセンサです。応用することで物体の姿勢、方位、位置、速度などを計測することが可能です。身近なものの例だと、スマートフォンやゲーム機などのジャイロセンサなど、幅広く利用されているセンサです。

4,アイトラッカー
眼球運動から視線の情報を取得し、分析することで見ている対象を検出できる視線計測装置です。
運動解析ではボールを見てから次の行動に移す反応速度を評価する場合などの測定にも使用されます。

5,ひずみゲージ
物体が引っ張られたり、圧迫されたりした時の変化量の割合を測定できるセンサです。
構造が単純で高精度なため応用範囲が広く、荷重測定・変位測定・振動測定・加速度測定などに使われています。

6,ロードセル
上述したひずみゲージを利用して力を検出するセンサーです。荷重変換器や荷重センサーとも呼ばれています。身近なものだと体重計や台はかりなど、主に重さを量るものに使われています。

これらの解析手法を用途に応じ組み合わせることにより、詳細な運動解析データを取得することが可能です。「バイオメカニクス」等の先端研究や機械工学の動作分析、モーションキャプチャ技術に活用され、スポーツ・医療・介護・エンタメなど幅広い分野で大きく貢献しています。

モーションキャプチャを用いた運動解析事例

モーションキャプチャを用いた運動解析の事例をいくつかご紹介したいと思います。

アメリカのメジャーリーグMLBでは「スタットキャスト」というレーダーと、ステレオカメラを利用して選手やボールの動きを分析するためのデータ解析ツールがあります。
「スポーツ分野では運動を解析しパフォーマンス向上、改善などをする」と記述してきましたが、試合中のリアルタイムな運動解析データを視覚的にわかりやすく表示するのに利用されています。

タップダンサーの足の細かい動きが計測されている様子の動画です。座標データだけでなくアニメーションとして表示することにより、動きが直感的にわかりやすくなりますね。

計測器具のフォースプレートと組み合わせて、モーションデータと床反力データが統合され表示されています。このデータを元に患者に状況を説明したり、リハビリの方向性決定に活用されています。

まとめ

運動分析は、対象物の動作をより深く知るための方法です。

今後さらに簡単な動作で評価や改善が可能となれば、スポーツでは更なる競技力の向上を図れたり、学校での体育の授業や部活動にも活用されるのではないでしょうか。

  • URLをコピーしました!
目次