
2025年5月13日、TBS系列の人気番組『マツコの知らない世界』にて、「モーションキャプチャーの世界」が特集され、大きな反響を呼びました。番組内では、株式会社カプコンが手掛ける『モンスターハンターワイルズ』や『ストリートファイター6』における、最新のモーションキャプチャー技術が紹介され、制作の裏側に迫る貴重な映像が放送されました。普段は見ることのできないゲーム開発の現場、そのリアルな動きの秘密に、多くの視聴者が驚きと感動を覚えたのではないでしょうか。
人やモンスターに命を吹き込む「モーキャプ」技術
モーションキャプチャー、通称「モーキャプ」は、人間や動物の動作を高精度なセンサーや専用カメラで位置情報を記録し、それを3DCGなどのデジタルキャラクターに反映させる技術です。映画、アニメーション、ゲーム制作の分野では今やなくてはならない存在であり、キャラクターの歩行やジャンプ、戦闘動作はもちろん、表情の細かな変化に至るまで、この技術によってリアルに再現されています。
近年では、単なる動きの記録にとどまらず、筋肉の収縮や体重移動といった微細な身体の動きまでも高精度に捉えることが可能になりました。これにより、視聴者やプレイヤーはまるで本物の人間がその世界で生きているかのような臨場感を味わえるようになってきています。まさに、視覚体験の進化を象徴する技術であると言えるでしょう。
『モンスターハンターワイルズ』――新モンスターの“存在感”を演技で創る
番組内では、2025年発売の『モンスターハンターワイルズ』に登場する新モンスター「アジャラカン」の動きを撮影する様子が紹介されました。アジャラカンは、独特の体格と力強い挙動を特徴としたモンスターで、その存在感を画面上に再現するためには、並外れた演技力と技術が求められます。
収録現場では、モーションキャプチャースーツに身を包んだアクターが、重心の移動、腕や尻尾のようなパーツのしなやかな動き、着地時の衝撃まで丁寧に表現し、あたかもそこに本物のモンスターがいるかのような説得力を持たせていました。現実には存在しない生物でありながら、「実在感」を感じさせるためには、演技者の身体能力や想像力、そして演出家との綿密な連携が不可欠なのです。
『ストリートファイター6』――格闘アクションの迫力を支えるリアルな演技

続いて取り上げられたのが、対戦格闘ゲームの金字塔『ストリートファイター6』です。番組では、キャラクター「ジェイミー」が必殺技「爆廻(OD版)」を繰り出すシーンのモーキャプ収録の様子が特集されました。
この収録では、アクターが何度もテイクを重ねながら、技の速度感、攻撃の重み、動作のクセといった細部にまでこだわって演じていました。格闘技の知識に加え、キャラクター設定やバックストーリーへの深い理解があってこそ、リアルな演技が実現されるのです。
その成果はゲーム中のアニメーションにも如実に表れており、視聴者は収録現場と完成映像を比較することで、映像の裏にある「演じる技術」に感銘を受けたことでしょう。
モーキャプ俳優・古賀亘氏の言葉に見るプロの矜持
番組には、数々の人気作品で活躍するモーションキャプチャー俳優・古賀亘(こが わたる)氏も出演しました。彼は、人間の演技だけでなく、モンスターや動物、時にはロボットのような非現実的な存在に至るまで、演じ分けることのできる実力派アクターです。
古賀氏によれば、1キャラクターにつき最大2,600カットを収録し、4年近くにわたる長期収録になるケースもあるとのこと。集中力と持久力が求められる過酷な現場でありながら、観る者に命を吹き込まれたようなキャラクターを届けるため、常に高い演技力と感性が求められると語っていました。
ゲームだけではない――広がるモーションキャプチャーの可能性

モーションキャプチャー技術の活用は、今やゲームや映像制作にとどまりません。スポーツ分野では、アスリートの動作を解析し、パフォーマンス向上に役立てられています。医療分野では、リハビリ支援や手術のシミュレーションに利用され、患者の回復をサポートしています。また、伝統芸能の世界では、貴重な舞踊や所作をデジタルで保存・継承する取り組みも進んでいます。
こうした活用はすでに大学や研究機関でも検証されており、モーションキャプチャーは人間の身体の動きを科学的に理解・分析するための重要なツールとして、ますます注目を集めています。
見えない技術が未来をつくる
『マツコの知らない世界』で紹介されたモーションキャプチャーの技術とその現場は、私たちが日々楽しんでいるゲームや映像作品の裏側にある、膨大な努力と創意工夫を可視化してくれました。
最新技術によって実現される“リアルな動き”の背後には、数えきれないほどの試行錯誤と、演者・技術者の熱意があります。彼らの仕事は決して表には出ませんが、私たちの心を動かし、感動を与える源となっています。
今後もモーションキャプチャーは、映像体験をより豊かにし、医療や教育など新たな分野にも貢献していくことでしょう。そしてそのすべては、見えない場所で支える人々の力によって成り立っているのです。