モーションキャプチャに使われるバーチャルカメラとは

近年ではスマートフォンの普及により、誰でも手軽に映像を撮影することができるようになりました。

映像制作において欠かす事ができない要素であるカメラのなかでも、今回は「バーチャルカメラ」についてご紹介していきたいと思います。

目次

バーチャルカメラとは

MayaやMotionbuilder、blender、unityなどのソフトウェアで作成し、CGの世界を撮影できる「カメラ」のことです。3DCG制作に携わっている方なら触る機会が多いかと思いますが、なかでもCGソフトウェアを扱えない実写の撮影を行うカメラマンでも扱えるようにしたカメラのことを「バーチャルカメラ」と言います。

一般的なものはモーションキャプチャシステムを利用したバーチャルカメラです。人物の動きを収録するのと同じようにビデオカメラ、もしくはカメラに見立てた物にマーカーを付け、移動と回転をキャプチャすることで、実際の撮影現場で撮られたような臨場感のあるリアルなカメラワークをCGの世界に取り入れることが可能となります。こういった手法は映画やドラマのVFXを使った映像制作で実際に利用されています。

また、バーチャルカメラやスマートフォンを使って、後から3D空間内でリアルタイムにカメラを動かし撮影することも可能であったり、さまざまな活用方法があります。

バーチャルカメラのメリット

バーチャルカメラを利用することで、得られるメリットは大きく分けて3つです。

臨場感のあるカメラワークを再現できる

たとえばキャラクターが撮影しているなどの一人称の表現演出の都合で、手付けアニメーションで工数が多くなりやすい自然な手ブレが再現できるため、少しの修正で直線的ではない臨場感のあるカメラワークを容易に作れることは大きなメリットといえるでしょう。

ビデオコンテに利用できる

本番撮影だけではなくプリビズのようなビデオコンテにも映像を使うことができます。

たとえば絵コンテでは伝え切れない箇所を補完するような映像資料として使えたり、モーションアクターやクライアント同士でイメージの共有をするために利用できるでしょう。

また、監督やカメラマンがCGオペレーターを通じて確認、再現する作業の工程なども、実際にカメラマンが操作できる点に加え、リアルタイムにプリビズを行えるため効率が大きく上がることが期待できます。

撮影者のスーツ着用不要

カメラの位置情報さえ収録できれば良いので、カメラマンは専用のアクタースーツを着る必要がなく、撮影スタッフやモーションキャプチャスタジオの負担を減らすことができます。

バーチャルカメラのデメリット

バーチャルカメラはメリットだけではなく、デメリットも存在しています。

決まったカメラの形状が存在しない

形式が決まっておらず、専用のカメラも存在しないためどうしても自作する手間が発生します。たとえば撮影用のカメラ、またはカメラのような形状を製作した物にマーカーを付けプロップとして登録・認識させる必要があります。

CG製作会社やモーションキャプチャスタジオによってさまざまですが、なかにはカメラマンがズームなどカメラレンズ設定をコントローラーで直感的に操作できるように工夫しているところもあるようです。

背景モデルが必要

対象物の距離感も重要な要素の一つになるので、完成背景モデルでなくともある程度レイアウトがわかるような背景を用意する必要があるでしょう。

また、背景があることによって、映像のイメージを具体的に共有することが可能であるため、ないよりあったほうが効率的に制作することが可能です。

撮影のリテイク率の上昇

撮影した映像はその場で確認できるため、監督からカメラマン、CGディレクターなどが納得いくまで検証や撮影が可能な関係上、撮影のリテイク率は上昇することが考えられます。

ですが、プリビズなどで試行錯誤やシミュレーションに時間を掛ければ、結果的にその後の工程にかかるであろうスタッフの負担が軽減することを考慮すると、必ずしもリテイクが重なることはデメリットにはならないでしょう。

制作事例

バーチャルカメラを利用し制作された作品の事例を紹介します。

映画「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」

ジェームス・キャメロン監督が全てCGのキャラクターや背景のシーンでも、自身の手によって実写カメラのようにバーチャルカメラを操作し制作した経緯があります。

ゲーム「バイオハザード5」

バーチャルカメラはゲーム開発でも活用されており、空からのショットや、併走する車からのカメラショットといった撮影も容易に再現を可能としています。

映画「はやぶさ 遥かなる帰還」

カメラマンがバーチャルカメラを使用し、監督のイメージ通りのプリビズを実現できたとのことです。検証を繰り返すことで完成度を高めることができたそうです。

まとめ

モーションキャプチャにバーチャルカメラを利用することで、通常は1カットの映像を制作するのに通常は数日かかるものが、簡単に短時間で制作できるようになるということがわかりました。

また全体の工数短縮だけでなく、大がかりなセットや機材を使用する事なく映像制作ができるのも大きなメリットでしょう。

今後もバーチャルカメラはさまざまな場面で利用され、映像制作の効率化に貢献し続けることでしょう。

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