東京都内のモーションキャプチャスタジオの魅力に迫る「東京モーションキャプチャスタジオ特集」
今回はバルス株式会社様が誇るSPWN Studioさんに訪問して、Vtuberライブ配信の
最前線を支えるスタッフの皆さんの熱い想いを伝えていただきました!
スタジオを案内していただいたのは、カスタマースケール&サクセス部門長の伊藤慎之介氏と、モーションキャプチャーオペレーターの稲垣亮輔氏です。
Information
スタジオ情報|https://mocapdb.com/studio/std1514/
〒103-0015
東京都中央区日本橋箱崎町36番2号
多彩な企画に対応できるAスタジオ
15m×5mの広々としたアクティングエリアを52台のカメラが取り囲むメインスタジオでは、音楽ライブのみならずフォーメーションダンスやバラエティ企画など様々な収録が行われています。
VICONのValkyrie VK26を12台、Vantage V16を40台備えた圧倒的な精度で、10人規模の収録を可能にしています。
Vtuberさんがゲストを招いたりユニット単位で出演するような音楽ライブの要件を十分に満たしているほか、アクティングエリアの広さを活かし、スタジオ内にドリーや大道具を持ち込んで、某テレビ番組のオマージュとしてバーチャル上での大型バラエティ企画を実施したことも!
実写合成も可能なBスタジオ
6m×3mのアクティングエリアがあるサブスタジオは、20台のVantage V16によって最大4人の同時収録が可能であることに加えて、Aスタジオから同型のカメラを4台移設すれば6人まで収録できるそうです。
簡易に高品質な3Dライブが実施できる「SPWN ARENA」をはじめとして、比較的コンパクトな予算の収録や、バルスさんの自社IPの収録に利用されています!
また、Bスタジオでは小さめのクラブハウスと同じ照明が用意されており、グリーンバックを用いた実写の声優さんや2.5次元系のタレントさんのMV収録も可能となっています。
画期的なARライブを支えているのもBスタジオであり、照明の色味を合わせることがリアルとバーチャルの融合を可能にしたのだそうです!
A+B=∞!
SPWN Studioさんでは、AスタジオのモーションキャプチャーとBスタジオのクロマキー撮影、AR撮影を連動させることで、リアルとバーチャルの出演者が同時にステージに立つライブを演出できます。
例えば、過去にはVTIF(東京アイドルフェスティバルのバーチャル限定ステージ)においてリアルのアイドルとバーチャルアイドルが共演するライブを実現したり、他にも実写照明を用いた空間演出とバーチャルアイドルの融合を行うARライブも実施しています。
限界への挑戦、14人同時ライブ配信!
Aスタジオで行われた最大規模の収録が、14人のタレントさんによるフォーメーションダンスの生配信です。
クライアントの熱い想いに応えて、ダンスを別撮りせずAスタジオに集結した14人のタレントさんを同時に収録できたのは、マシンパワーだけでなく技術的な問題とリアルタイムに戦い続けたテクニカルスタッフや熟練のディレクターといった方々の実力の賜物でした!
日々これ研究なり
SPWN Studioさんにはモーキャプ、配信、照明、カメラマン、Unity、CG、サウンド、映像ディレクションといった各方面の専門家が常駐しており、収録が無い時には各チームが連携して演出・技術検証を繰り返しています。
ステージの魅せ方、AR演出、モーションの調整など、日々の研究が未来のライブを作るのです。
また、ディレクターが企画の要件を整理して、演出の方針をかみ砕いてテクニカルスタッフと打ち合わせを行ない、技術的な課題の洗い出しを行うというワークフローをスタジオ内で一貫できるので、クライアントが本当にやりたいことを実現できるのです。
伊藤さんと稲垣さんにインタビュー!
ではここからは一問一答形式でSPWN Studioさんについて、さらに深堀していきます。
- 様々な企画を実現してきたSPWN Studioさんですが、今後はどのような機材を導入していきたいですか?
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(稲垣さん)基本的にはモーショントラッキングを請け負っている関係上、より精度の高いハイエンドなVICON製品を導入していき、最終的にはValkyrieで統一していきたいです。
また、トラッキングの精度を伸ばしていくと同時に、ライブ制作における選択肢を増やすためにRedspyなどのAR周りの機材も導入していきたいと考えています。
- 特に印象深かったお仕事のエピソードを教えてください!
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(稲垣さん)やっぱり14人同時収録です。このお仕事を通して弊社のできること、できないことの限界値を見つけることができて、のちの様々なイベントにこの経験が還元されていると思います。
フォーメーションをしっかり組んだダンスや演劇仕立ての収録、アクティングエリアを一杯まで使った収録などのディレクションに、この時の経験が活かされています。
14人同時稼働の際は常に大幅なフレーム落ちが発生している状態で、収録データとして使い物にならないのではないかと思えるほどでしたが、リアルタイム処理の方で創意工夫してライブとして成り立たせることができました。
(伊藤さん)今のはどちらかというと大型で作りこみも細かいイベントの話題でしたが、それとは別に弊社ではSPWN ARENAというブランドを立ち上げていまして、大手事務所さんや個人VTuberさんを始め、色々な方にご利用いただいています。
これは弊社がこれまで培ってきた技術を仕組み化して簡易的なパッケージとして提供しているもので、どちらかというとライトに始められることをテーマにした3Dライブ制作の新しいフォーマットになります。
これは予算的にもスケジュール的にもかなりコンパクトにできるので、日常使い的な3Dライブとして強化しています。
初めて実際にSPWN ARENAで実施したライブを見た時は、3Dライブの裾野を広げる取り組みになると確信し印象深かったです。
- 最近はコンパクト化した収録の方にも力を入れていらっしゃるんですね!
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(伊藤さん)そうですね。
私たちは2023年の年末から個人VTuberの活躍の舞台を増やすという目的で「バチャカル」というイベントも立ち上げました。
現在はいわゆる大手事務所に資金が集まり3Dライブの規模も大きくなっているのですが、一方で個人のVtuberさんや、もっとライトに3Dで活動をしたいという人も裾野として広がっているように感じています。
私たちとしてもコンパクトに3Dライブができれば業界全体を盛り上げることに協力できるのではないかと考えて、大型の収録とコンパクトな収録の両軸でやらせてもらっています。
- Vtuber業界を盛り上げるために数々のチャレンジをしていらっしゃるSPWN Studioさんですが、ここでスタジオ設立のあらましを教えていただけますか?
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(稲垣さん)2018年以降、末広町にてVtuber向け3Dライブ・コンテンツの制作事業を進めるにあたり、スタジオが無ければビジネスが成り立たないということでビルの一角を借りてモーションキャプチャースタジオを設立しました。
その後、業界が盛り上がるにつれてニーズが増えて、Vtuberの人口が増えることで案件も増えまして、そうなると同時に出演したい人数も増えていくため物理的な制約を感じるようになりました。
そこで2年前から現在の水天宮前に移転して、ワンフロアを使った広いスタジオを立ち上げることになり、今に至ります。
- ここまでたっぷりと音楽ライブについてのお話を聞かせていただきましたが、改めてバルスさんが得意な分野についてお聞かせいただけますか?
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(稲垣さん)やはり音楽ライブ制作とバラエティ配信の制作が得意です。
VTtuber3D配信をはじめとしたという映像・CG・ゲームエンジン・プログラミングといった知識を結集して作り上げるコンテンツの制作は得意分野であると言えます。
また、テクニカルな部分だけでなく、弊社にはディレクターが社内におり、テレビ番組やYoutuberの運営に携わっていた方や、プロジェクションマッピングを経験した方など様々な分野でキャリアを積んだ方が参画しています。
その結果、単にクライアントの要望に合わせて技術やスタジオを提供するだけでなく、IP・タレント様のビジネス課題に対して企画・コンテンツで解決するという提案力が強みになっています。
- Vtuber業界の盛り上がりとともに駆け抜けてきたSPWN Studioさんですが、これからどのような方とコンテンツを作っていきたいですか?
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(稲垣さん)テクニカルな面の話になるんですが、やはりこれだけ広いアクティングエリアを保有しているスタジオですから、エリアの広さと、カメラ台数により担保できる精度をフルで活用していただける方と一緒に作っていきたいですね。
ディレクターもそうですが、照明のプロの方が参画したことでUnityチームやCGチームも含めた表現の幅が増えた経験がありますから、そういったライブ制作における可能性を広げていくという意味で、アクティングエリアをフルで使う、照明を増設する、エリアの広さを活かして高低差のある演出ができるステージを作るといった提案をしてくださる方が、同僚・クライアントともに一緒に働きたい方になります。
(伊藤さん)私たちは3Dライブ制作も番組制作も、あくまで手段の1つだと思っています。
究極はアーティストやタレントさんといった方々がやりたいことであったりファンに届けたいものがあるはずで、そこを私たちが得意な領域でサポートするといったことが大事だと考えています。
一緒にコンテンツを作っていく方については、なんでもいいので3Dライブがしたいというよりは、一緒にこういう新しいものを作っていこうだとか、今まで見たことのないものを一緒に作っていきたいだとか、そういう意思を持たれている方とご一緒できると、私たちとしても「燃えるな!」と感じます。
あとは採用についても、ただ専門知識があるからやりますというよりは、一緒に「良いものを作る」ということに対して同じ方向を見てものづくりができるメンバーと一緒に働きたいと思っています。
- 最後に、モーションキャプチャーのここが好き!というポイントを教えてください!
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(稲垣さん)私はもともと別の業界のスタジオで、フォトグラメトリという分野で働いており、3Dの業界でもあったのでモデリングの経験もありました。
しかしVtuberの業界に入って、良い意味でギャップを感じました。
例えば可愛いキャラクターを演じるアクターさんがバリバリにアクションができる人だとキャラクターの雰囲気と動きに大きなギャップが生まれるのですが、こういったギャップを埋めていく工程がこの業界ならではであり個人的にも好きです。
また、モーションを撮るうえでも物理的な制約があればそれを工夫して直すことができるというのも驚きでした。
物理的にやれること・やれないことが多くあり、3Dも万能ではないというところから生まれるギャップを埋めることにやりがいを感じています。
(伊藤さん)私は企画や事業を担当していますが、実際に収録現場に立ち会うと、3Dを使ったバーチャル表現の可能性を毎度感じます。
3Dアニメーションはある種の偶像、バーチャルの世界と言えますが、モーションキャプチャーがあることで人間味(実在する人間らしさ)が表現に入ってくるという部分で面白さを感じます。
エンタメを作っている中で面白い所ってそういう部分からも生まれるんだろうなと思います。
最後に
今回はバーチャルライブ制作のトップランナーであるSPWN Studioさんにて、普段は語られることの無いステージの作り手の皆さんが抱く熱い想いに触れることができて、非常に刺激的な取材になりました!
表現者の皆さんと一緒に誰も見たことのない素晴らしいものを作りたいという情熱と、それを実現するために様々な分野のプロフェッショナルが一丸となってステージを作り上げる姿からは、Vtuber文化の成長を支えてきた未知への探求心が伝わってきました!
Information
・Balus SPWN Studio
・SPWN ARENA
・VTIF
・バチャカル